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薬、レーザー、舌下免疫療法……花粉症治療の最前線!

年々花粉症に悩む人が増えるにつれ、その治療法も進化しています。
では今、花粉症治療はどこまで進んでいるのでしょうか。聖マリアンナ医科大学 特任教授・井上肇先生に、花粉症治療の最前線についてお話をうかがいました。
今すでに花粉症で悩んでいる方も、予備軍の方も知っておいて損はなし!

 

 

花粉症患者は増加の一途。一体なぜ?

ピークは超えたものの、まだまだ猛威を振るう「花粉症」。2008年に耳鼻科に実施した全国調査によると、アレルギー性鼻炎患者の有病率が人口の39.4%、うち花粉症が29.8%で、さらにスギ花粉症が26.5%を占めていると報告されています。
また、東京都がおこなった調査では、2017年度の東京都民の花粉症有病率が48.8%と推定されており、凄まじい勢いで増えていることがわかります。一体なぜなのでしょうか。

「スギ花粉症に限って言えば、林業の衰退と都市化を含めた気候変動、そして大気汚染が影響しているのでしょう。過去に大量に杉が植林され、適切な管理による伐採と間伐がおこなわれなかったこと、建築資材などでの用途が少なかったことによる杉の放置が原因であると考えられています。

加えて、温暖化に伴う異常高温などで杉の花粉飛散量が極端に増えること、また都市化に伴いアスファルトが増えて土面が減少し、飛散した花粉が土に戻れなくなり、空中を飛散する花粉量が増えることも要因として挙げられます。

さらに、中国からの大気汚染やPM2.5などの微粒子が花粉症の症状を悪化させたり、 石炭・石油の排気に含まれる微粒子が杉花粉などのアレルゲンの感作を増強することも、花粉症患者が増加している要因と考えてよいでしょう」(井上先生)

花粉症は国民病にあらず。世界規模で増えている!?

花粉症は今や日本人の国民病のようなイメージがありますが、その罹患者は世界的にも増えているといいます。

「2018年2月のイギリスにおける研究では、ヨーロッパ全体で花粉症の罹患者が3300万人にのぼり、急激に増加していると報告されています。ヨーロッパは昔『枯草熱』というアレルギーがありましたが、現在はブタクサが主体になっているようで、アメリカにおいても同様の傾向があると考えられます。もともとヨーロッパにはブタクサは少なかったのですが、温暖化といった気候変動によって、動植物の北上化が見られることも影響しているのでしょう」(井上先生)

花粉症にかかりやすい人、かかりにくい人の差って?

花粉症患者が増えていくなかで、どんなに花粉の飛散量が増えてもまったく症状が現れない人もいます。その差はどこにあるのでしょうか。

「アレルギーは遺伝することがわかっており、両親の片方がアレルギー保有していると子供の30%に、両者がアレルギー素因を保有していると50%にアレルギーが出ると報告されています。

そもそも花粉症とはI型のアレルギー疾患なので、ばい菌に感染したりするような疾患とは質的に違います。誰もが最初はスギ花粉などには反応せず、花粉症に罹患するには、『感作』や『免疫の獲得』と言ったプロセスを経る必要があります。

自分の体が花粉を『異物』『攻撃するもの』と認識したときに『感作』が成立して、次に花粉が体内に入ってきたときに、防衛網が働いて様々な症状が引き起こされるのですが、花粉に対する免疫が寛容なヒトは花粉症に罹患することはなく、許容(認容)できない人が花粉症になるのです」(井上先生)

どこまで進んでいるの? 最先端の花粉症治療とは

目のかゆみや鼻水、咳やくしゃみなど、症状は何であれ、花粉症は花粉をアレルゲンとするI型アレルギーで、主にヒスタミンやロイコトリエンなどと呼ばれる物質によって引き起こされます。そのため、「抗ヒスタミン薬」「抗アレルギー薬」などと表示されている薬による治療が一般的でしたが、現在の花粉症治療はどこまで進化しているのでしょうか?

「有効な治療法は、根本療法と対症療法に分類できます。ここ数年注目されている根本療法とは、花粉によるI型アレルギーを引き起こさせなくする治療法のこと。『減感作療法』とか『脱感作療法』などとも呼ばれています。

アレルギーの原因物質を含むエキスを舌の裏に投与し、体内に吸収させる舌下免疫療法もこの範疇に入ります。これらの治療方法は、文字通り花粉症そのものを根本的に治療する技術ですが、その有効率は50〜70%程度、治療期間も年単位に及びます。

また、治療中にも花粉症にかかるので、その対策としての治療(対症療法)も必須になります。ただし、効果のある人にとっては大変有効な治療法です」(井上先生)

治療効果を最大限に発揮させるためには

治療効果を最大限に発揮させるためには

有効な治療法は日夜開発されているようですが、どれも一過性の効果しかなく、まだまだ完治させるところまでは至っていないよう。では、より治療効果を発揮させるためには、どんなことを意識すべきなのでしょうか。

「レーザーやボトックスなどは、予防的に花粉症の始まる1ヶ月くらい前に実施することが重要です。レーザーは鼻粘膜を焼却して、アレルギーが起こる場所を焼き尽くしているのですが、焼畑農業と一緒で時間が経てばもとに戻ってしまいます。効果実感が高い反面、その後のケアをしっかりしないと、かえって粘膜癒着を起こして鼻閉を助長されるというデメリットもあるため、抗ヒスタミン薬などの全身投与、点眼などが主体となった対症療法が選択されることが一般的です。

症状が強い場合には、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の点鼻吸入や点眼なども効果的。花粉の飛散がピークの時などは、むしろ短期的に副腎皮質ホルモンの全身投与をして、症状を落ち着かせてから抗ヒスタミン薬などを併用することも社会生活を円滑に営むためには重要です」(井上先生)

井上先生によると、極度な緊張やストレスなどは、免疫系を狂わせてアレルギーを引き起こす原因になるといいます。また、刺激性食品の過剰摂取なども、毛細血管を拡張させ症状を強くする可能性が高くなるため、花粉症シーズンは好ましくないそう。
このように、現代人の日常には花粉症の引き金となる要因がそこかしこに潜んでいます。花粉症の症状を軽減するためには、ライフスタイルから見つめ直すことも大切です。

(文・坂井七緒美)

井上 肇

この記事の監修

井上 肇(いのうえ はじめ)

聖マリアンナ医科大学 特任教授
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。

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