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何を食べても薄味に感じる

何を食べても薄味に感じる

井上 肇

聖マリアンナ医科大学 特任教授

井上 肇(いのうえ はじめ)

症状
若い人に指摘され、初めて気づく味覚の老化

「今日は久しぶりに息子家族とのランチ会。でも、このところ、何を食べても味が薄い。塩を振りかけているのは私だけ。みんなは薄くないのかしら? じゃあ、夕食は腕をふるって美味しいものをつくるわね。ところが孫たち“おばあちゃんの料理、しょっぱい!”とクレームの嵐。もしかして私、味覚音痴になったのかしら???」

目や耳の老化は自覚しやすいのですが、味覚の老化は人にいわれるまで気づきにくい傾向が。特に、高齢夫婦の二人暮らしなら、なおさら。若い世代に指摘され、ようやく味覚が鈍ってきたことに気づくことが多いようです。

原因
味蕾の数が減ることで味覚が鈍る

味を感知するセンサーは、舌の表面にある味蕾です。文字通り、花の蕾(つぼみ)のような形をした微小な感覚器官。味蕾は生後から増え続け、20歳くらいで約9000個に。加齢に伴い減少し、80歳では約4000個になってしまいます。そのため、60歳くらいから味覚が鈍くなってくるのです。また、味覚は、塩味・甘味・酸味・苦味・旨味の5つに分類され、特に感覚が鈍るのは塩味。次に甘味を感じにくくなります。

味蕾の数が減ることで味覚が鈍る

薬の苦味が味覚センサーを麻痺

副用している薬の種類によっても、味覚が変わる場合が。薬を飲むと成分は血液に移行しますが、唾液中にも薬の成分がにじみ出てくるのです。

すると、敏感な人は口の中が苦くなり、味にも違和感が。薬を飲み続けていることで、継続的に味蕾を刺激するので味覚センサーが麻痺し、味を感じにくくなるのです。味覚を変えやすいのは、高血圧治療薬、脂質異常症治療薬、抗アレルギー治療薬が代表的。薬の影響は、若い人でも味覚を鈍らせます。

乳幼児から濃い味ばかり食べると味覚が狂う

塩味・甘味・酸味・苦味・旨味といった味の分類は、0歳児ですでに形成されます。おいしい・まずいの感覚は、1歳から5歳くらいまでの間に形成。乳幼児からソースやケチャップなど味の濃い料理やジャンクフードばかり食べていると、若くても味覚が鈍くなってしまいます。

放っておくと…
高血圧と動脈硬化の深い関係

高血圧や動脈硬化になりやすく、脳卒中や心筋梗塞の危険性が。高血圧と動脈硬化には深い関係があり、高血圧になると動脈硬化になりやすく、動脈硬化があると高血圧になりやすいのです。日本高血圧学会 減塩委員会では、血圧が正常な人でも食塩制限(1日6g未満)を推奨。

塩味に次いで、味覚が鈍りやすいは甘味。甘味を感じにくくなるので、スイーツを食べても満足せず、つい量を多めに食べがち。すると、糖分の過剰摂取で、糖尿病の危険性が高まります。

対策

亜鉛を毎日摂って、味覚センサー復活を目指す!

亜鉛は細胞の新陳代謝に欠かせないミネラル。不足すると味蕾の新陳代謝も落ちるので、味覚が鈍くなってしまいます。亜鉛を多く含む食品は、牡蠣・ビーフジャーキー・パルミジャーノレッジャーノ(=パルメザンチーズ)・煮干し・たたみいわし・豚レバー・抹茶(粉)など。サプリメントで補うのもオススメです。味蕾は10日ほどで生まれ変わるので、毎日摂取すると効果も表れやすいでしょう。

素材の味そのものが濃い、良質な食材で調理

素材自体の味が濃い、滋味に富んだ食材を、ダシを利かせて調理してください。すると、調味料に頼らなくても味を感じやすくなります。塩は食卓塩ではなくミネラルの多い自然塩で。白砂糖もミネラル豊富な黒砂糖に替えると、少量でも味に深みが。高齢の方はもちろん、味覚が形成される0歳から、良質な食材で味覚を鋭敏にさせることが大切です。

また、減塩梅干しには注意して。塩分の替わりにうまみ調味料(グルタミン酸ナトリウム)で味付けしている場合もあるので。減らさなければいけないのはナトリウム。食塩(塩化ナトリウム)を減らしても、グルタミン酸ナトリウムが使用されていては、塩分を減らしたことにならないからです。減塩だからと油断して食べ過ぎないように。

薬を変更できるか主治医に相談を

内服薬で口の中が苦くなってしまったら、薬を変更できるかどうか主治医に相談してください。唾液に分泌された薬の成分が味覚を変えているので、口をすすいでも効果が感じられないかもしれません。

舌苔クリーナーで舌の表面を掃除して

舌の上にある白い苔状の舌苔(ぜったい)が溜まると、味覚が鈍くなることも。舌苔専用クリーナーで掃除すると、口の中がサッパリします。歯ブラシで掃除すると、舌を傷つけやすいので要注意。

酸味を加え、塩味が濃くなったかのように舌をだます

味覚が鈍くなると、酸っぱいものを塩味だと勘違いしやすくなります。魚は塩を減らして焼き、焼き上がりにレモンか酢を振りかけて食べると、しっかりした味付けを堪能できるはず。

また、唾液中に含まれているアミラーゼという酵素は、テンプンを甘い麦芽糖に変える作用が。精製米には約77%、小麦粉には約75%ものデンプンが含まれています。ご飯やお団子、パンやクッキーなどをよく噛んで食べると、甘味を感じやすくなるでしょう。

井上 肇

この記事の監修

聖マリアンナ医科大学 特任教授

日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師

井上 肇(いのうえ はじめ)

星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。

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